県政オンブズマン静岡 〜静岡県庁の光と闇〜

1 空港アクセス向上事業費


平成27年3月9日(月)

本日は、以下に平成27年度予算の「空港アクセス向上事業費」を紹介します。


利用が少ないのは静岡空港の空港アクセスに問題ありとして、平成26年度に学識者や空港関係者らを集めてアクセス改善策を出してもらった静岡県。
その結果として、新たな取組として予算化されたのが浜松市街地と空港を結ぶ乗合タクシー(事前予約制)です。
これに伴い、昨年の「空港アクセスバス運行事業費」を廃止し、新規事業として「空港アクセス向上事業費」という名称で、従前のバス事業を継続しつつ乗合タクシーを行うこととしました。
目玉の「予約制乗合タクシー」事業は、以下に記載のあるとおり、「他空港に対する優位性の確保」により「ビジネス利用者の掘り起こし」をするとのことで、「低廉な運賃」を売りにする事業です。



「空港アクセス向上事業費」の予算額は1億2,000万円、平成26年度の「空港アクセスバス運行時行費」6,800万円に比べ大幅増となります。
個別事業費の一番大きなものは、「アクセスバス(静岡線)」で、4,938万円、次に「乗合タクシー」で3,200万円、次に「アクセスバス(島田線)」で、2,996万円となっています。
「乗合タクシー」は新規取組のため全額純増ですが、バス事業だけでも、昨年より1,215万円増えています。これは、航空機遅延に対応するため、バス会社に経費補填が必要となるためです。


この予算の問題は、次の文書に凝縮されています。
3の「事業の主たる活動指標(アウトプット)・効率指標(単位当たりコスト)」の効率指標をご覧ください。
この指標は、総コストを利用者数で割ったものですが、平成25年度が1,195円、平成26年度が1,340円、平成27年度(見込み)が1,691円と、一人当たりのコストがアップしていくのがわかります。
普通の事業ならば、コストを以下に減らしていくかが問われるものですが、全く逆です。
これは、1の「事業の必要性」にその原因が明記されています。すなわち、「空港利用者数の目標を達成する」ための事業としてこの事業が存在するからです。
普通に考えて、ターゲットにしているビジネス航空利用者が、市場原理に基づき浜松から中部国際や名古屋空港を使って目的地に行くことに何ら問題はないはずです。
にもかかわらず、そういう人にも静岡空港から行き来してもらわなければならない理由はとは、まさに「空港利用者数の目標を達成する」ためだけなのです。
数値目標で管理され評価される役人にとっては、数字の達成が最優先目標となります。
ゆえに、それ以外の公益性判断はもちろん、コストも二の次三の次となるのです。

特に、新規取組の「乗合タクシー」のコストを見るとそのことがよくわかります。
先の文書中にこの「乗合タクシー」の年間利用者想定が5,000人と出ていますが、それに対する事業費は3,200万円です。
よって、利用者一人当たりに県が税金で負担(補助)する金額は6,400円となります。
往復利用なら1万円を超えてしまいます。
社用で福岡に行くビジネスマンに対して、中部国際空港を使わずに静岡空港を使って行ってもらうために、これだけの税金を投入する公益性とはいったい何なのでしょう。
もしいかばかりかの公益性があるとしても、それは他の公益に優先して税金を投入すべきものなのでしょうか。

これもみな、利便性で優位に立つ大空港に挟まれ十分な需要の見込めないところに県民合意を欠いたまま空港を作ってしまったがためなのです。



なお、本事業の予算調書のPDF版はこちらhttp://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/html/20150308220112.pdfです。